MOROCCAN RUG GUIDE
モロッコのラグには、先住のアマジグ(ベルベル)の文化と、アラブをはじめとするさまざまな文化の影響が重なり合っています。 伝統的なシンボルや幾何学模様に、織り手それぞれの自由な色使いや感性が加わることで、モロッコラグならではの独創的なデザインが生まれました。 それらは単なる生活道具にとどまらず、ベルベルの伝統や暮らしを映したアートとしても親しまれています。 一枚ずつ手仕事で織られるため、同じものはありません。素材の表情や織りのゆらぎまで含め、それぞれが異なる個性を持っています。 暮らしの中で長く使いたいと思える一枚と出会うこと。 それも、モロッコラグを選ぶ楽しみのひとつです。
Hibouで扱ってきた代表的なモロッコラグを、 それぞれの特徴とともにご紹介します。

色と素材の自由さから生まれた、ボシャルウィット
ボシャルウィットは、20世紀後半、1970〜80年代頃から広まった比較的新しいモロッコラグです。古い衣服や布、ほどいたセーターの毛糸など、身近にある素材を再利用して作られるようになりました。裂き布を中心にさまざまな素材を使うことで、他のモロッコラグにはない自由な色彩と表現が生まれています。
古布や裂き布を中心に、ウールの毛糸、綿、ナイロン、アクリルなどさまざまな素材が使われます。
裂き布を使ったタイプ
糸を使ったタイプ
ウールの糸を主体とする他のモロッコラグに比べ、素材そのものの色を自由に取り入れられるため、カラーパレットが豊かで、大胆な配色や思いがけない組み合わせが生まれます。
織り、結び、ループなどを組み合わせながら自由に作られ、一枚ごとに色も柄も表情も異なります。織り手の感性が強く表れる、独創性の高いラグです。
アトラスの暮らしと感性を映す、アジラル
アジラルラグは、モロッコ中部のハイアトラス山脈、アジラル地方で古くから家庭のために織られてきたラグです。長い間、市場向けの商品ではなく暮らしの中で使われてきたため、海外で広く知られるようになったのは比較的新しく、1990年代頃からとされています。 伝統的なアジラルには、アトラスのアマジグ文化を感じさせるプリミティブなモチーフや自由なラインが多く見られ、近年は鮮やかな色糸を取り入れたものも増えています。
主にウール。白や生成りの無染色ウールをベースに、色糸や異素材を組み合わせたものもあります。
ベニワレンと同じくウールのパイルラグですが、比較的目が詰まりすぎず、軽やかな織りのものが多いのが特徴です。自由な線や、人物・動物・記号を思わせるプリミティブなモチーフが一枚ごとに異なる表情を作ります。
古いものには黒や茶を中心とした素朴な色使いと、土着的で自由なベルベル紋様が多く見られます。近年のものは鮮やかな色糸や抽象的なモチーフが増え、よりカラフルで現代的な印象になっています。
ヴィンテージ
今もの
トラディショナルとモダンが交差する、ザナフィキリム
ザナフィは、モロッコ南部のタズナフト周辺に受け継がれてきた平織りの技法をもとにしたラグです。 その織りの歴史は古い一方、現在「ザナフィ」として広く知られる、白・黒・茶など限られた色彩と幾何学模様を生かしたグラフィカルなスタイルが注目されるようになったのは2010年代頃から。 伝統的な手織りの技法と現代的な感覚が重なり、モロッコラグの中でも独特の存在感を持つようになりました。
主にウール。白、黒、茶、グレーなど、羊毛そのものの色を生かしたものが多く見られます。
毛足のない平織りを基本とし、細かな幾何学模様を緻密に織り込んだものから、太い糸を使ったざっくりとした質感のものまでさまざま。軽やかでありながら丈夫なのも特徴です。タズナフト周辺のラグには、平織りとパイルを組み合わせたものも見られます。
細い糸で幾何学模様を緻密に織り込んだ、伝統的な趣のタイプ。 一方で、太い毛糸を使ったものは、ざっくりとした織りと素朴な質感が際立ち、よりモダンな印象になります。 同じザナフィでも、糸の太さや織りの密度によって表情は大きく変わります。
緻密な平織り
ざっくりした平織り
毛足のないフラットな質感が基本で、 織りの密度や糸の太さによって、薄手のものから厚みのあるものまであります。
プリミティブな美しさが、モダンな空間に映えるベニワレン
ベニワレンは、モロッコ中部のミドルアトラス山脈に暮らすベニ・ワレンの人々によって織られてきたウールラグです。寒さの厳しい山岳地帯では、床敷きや寝具として使われてきました。 山間部でアマジグ文化がより強く残り、自由でプリミティブなモチーフが発達した無染色の白や生成りのウールをベースに、黒や茶の羊毛で描かれる幾何学模様が特徴です。現在はダイヤや格子模様が広く知られていますが、古いものには、より自由でプリミティブなベルベル紋様や記号的なモチーフも多く見られます。
主にウール。羊毛そのものの白、生成り、クリーム色を生かした地に、黒や茶など自然な濃色の羊毛で模様を描いたものが多く見られます。
やわらかな毛足と、白や生成りを基調とした自然な色合いが特徴です。 シンプルな中にも、手織りならではの揺らぎや個性があります。
現在は格子やダイヤ模様のベニワレンが広く知られていますが、 古いものには、より自由で不規則なベルベル紋様や 記号のようなモチーフが織り込まれたものも見られます。
古いものに見られる自由なベルベル紋様
現在よく見られる格子・ダイヤ模様
密度の高いパイルに加え、毛足をほぐして起毛させたような、ふっくらとした質感もベニワレンの特徴です。空気を含むようなボリュームのある毛足は保温性にも優れ、寒さの厳しい中アトラスの暮らしに適したラグとして使われてきました。
艶やかな色彩と、自由な装飾性をまとうブジャド
ブジャドは、モロッコ中西部のブジャド周辺で織られてきたウールラグです。アトラス山脈のラグとはまた異なる文化的背景を持ち、赤やピンク、オレンジ、紫などを重ねた、艶やかで装飾性の高い色使いが多く見られます。 幾何学模様や抽象的なモチーフを自由に組み合わせ、色と柄が複雑に重なり合う表情もブジャドならでは。古いものは鮮やかだった色が年月とともにやわらかく退色し、深みのある独特の色合いへと変化しています。
MATERIAL 主にウール。古いものには植物染料が使われたものも多く、年月とともに色がやわらかく褪せ、独特の深みを帯びています。
深みのある色彩と、自由で不規則なモチーフが特徴です。 柄の密度や色の組み合わせによって、華やかなものから 落ち着いたものまで幅広い表情があります。
古い時代のブジャドには、赤、ピンク、オレンジ、紫など、艶やかで深みのある色彩が多く見られます。年月を経たものは、それらの色がやわらかく褪色し、ヴィンテージならではの複雑で落ち着いた色合いへと変化しています。 近年のブジャドでは、従来の暖色に加えて、青やグリーンなども取り入れられ、より色彩豊かで自由な配色のものが増えています。
ヴィンテージ
今もの
毛足の長さや密度、厚みは一枚ごとに異なります。 ヴィンテージでは、使い込まれることで毛足が落ち着き、 よりフラットな風合いになったものも見られます。